きょう、アテネ・フランセで、フランス語検定2級の二次試験を受けてきました。
(1) 二次試験当日の朝
場所は1次試験と同じ御茶ノ水です。
1次試験のときは、まったくと言っていいほど緊張しなかったのに、いよいよ面接だ、と思うと、きょうは、朝から、なんだかソワソワと落ち着きませんでした。
中央線に乗ってからも、ずっとソワソワし通しで、電車が御茶ノ水駅に入り、車窓から、ホームの柱にかかった「アテネフランセ」という青い看板が見えた瞬間には、心臓がキュンとしぼむほどでした。
駅前の交差点を渡り、交番の脇を抜け、途中、コンビニに立ち寄って、ミネラルウォーターを買うなどしながら、しばらく人の流れについて歩いていきました。
2次試験なのに、1次試験の時よりも、歩道を埋める受験生の数は多いくらいで、驚かされました。
すると、ほぼ全員が左に折れる曲がり角があったので、わたしも、「地図で確認したより、ずいぶん近いな」と多少はいぶかりつつも、その流れに従いました。
しかし、ぞろぞろと全員が吸い込まれていく建物まで、あと数メートルのところまで来たところで、はたと立ち止まりました。
入り口の表札が、「駿台予備校」となっていたのです。あやうく、中にまで入り込むところでした。
回れ右をして、逃げるように、もとの道に戻ると、その曲がり角より先は、ほとんど人通りがありませんでした。
そうだよな、2次試験だし、集合時間が分散されているはずから、どうりでおかしいと思ったんだ、どことなく客層も違ったし、と心の中で、汗をぬぐいました。
そして、さきほど目にした校舎が、実は、高校時代、自分が何度か足を踏み入れたことのある場所であったことに気がつきました。
あれから18年、まさかフランス語検定のために、36歳になった自分が同じ道を歩くことになろうとは、当時の自分は、夢にも思っていなかったろうな。
そんなふうに、しばらく感慨にふけっていると、変わった色の建物が見えてきて、入り口に、アテネ・フランセと書かれているのが目に入りました。
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(2) アテネ・フランセ
アテネ・フランセの入り口には、「13時まで仏検受験生の立ち入り禁止」と書かれた札が立っていました。
時間は、すでに13時半を回っていましたが、扉が閉まっていたので、入っていいものかどうか、ちょっと戸惑いました。
ガラス戸越しに、「仏検」と書かれたネームプレートをしたフランス人や日本人職員が何人か座って、談笑しているのが見えます。
たしか、受験票には、集合時間5分前から受付開始とあったので、ちょっと早すぎたのだろう、と思い、中に入って、しばらく1階のベンチに座って、休んでいました。
しかし、待てど暮らせど、なんの動きもないので、もう一度、入り口にもどって、掲示をよく見ると、なんと「受付は地下1階」とあるではありませんか。
しかも、1階で待たないで下さい、とも。
しまった、とちょっとバツの悪い思いをしながら、地下1階へと階段を下りていくと、左手奥の教室に、たくさんの受験生が座っているのが見えました。
すでに、待合室の中は、かなりの人数で埋まっています。
中に入り、ようやく空席を見つけ、ひと息ついたのもつかの間、14:00集合の受付は、もう始まっている様子です。
慌てて、そちらに向かい、受付の人に受験票を渡すと、部屋の番号が書かれたカードが手渡され、そちらに座ってお待ちください、と言われました。
言われたとおり、座って待機していると、「あ、14:07分の方は、まだです」とか「14:05分の方はまだです」というような受付の人の声が何度も聞こえてきましたので、ずいぶん細かく集合時間を区切っているんだなあ、と驚きました。
しばらくすると、14:00集合の受験者に対してのみ、職員の方から、今後の流れに関する説明や、携帯電話、参考書の使用禁止などの注意がありました。
それが終わると、各自、カードに書かれた教室へと向かうことになります。
わたしは、地下2階の教室でした。
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(3) 教室の外での待機
指定された教室の前に行き、そこにいた仏検スタッフに、教室番号が書かれた先ほどのカードと、受験票と、免許証を提示しました。
それぞれの教室の前では、すでに数人ずつが、静かに順番を待っています。
なにしろ、アテネ・フランセも初めてなら、二次試験を受けるのも初めてです。勝手が分からず、どうにも居心地が悪くてなりません。
しかも、ここでは、参考書を開くことも禁止されているので、わたしは、指示された通り、教室の前に置かれた椅子に座って、ただただ自分の順番を待つほかありませんでした。
耳をすますと、ひとつ向こうの教室から、壁ごしに、なんとなく話している声がもれてくるのに気がつきました。
しばらく聞くとはなしに聞いていると、何を言っているのかまでは判別できないものの、女性の声で、おどろくほど、流暢なフランス語が聞こえてきます。
時おり、面接官の笑い声も混ざったりして、とても楽しげで活発な雰囲気が、教室の外にいるわたしにも伝わってきました。
わたしは、そのあまりの見事さに、ええ、みんな、こんなにしゃべれるの?嘘でしょ、とあぜんとしました。
そんなの無理だってば。
しかし、いや待てよ、これは、きっと準1級の人に違いない。さっき待合室で受付の人に受験票を見せたとき、名簿に、準1級、2級と書かれていたのを見たもの。この人は、2級じゃないよ、ぜったい、と必死で自分に言い聞かせました。
しばらくして、大きな音を立てながら、重い扉が開き、中から、その女性が姿を現しました。
まじまじと見つめては失礼になるので、視線は床に落としたままでいましたから、表情こそ見てはいませんが、しかし、その颯爽とした歩きぶりから、自信と余裕が、ありありと、うかがうことが出来ました。
かっこいいなあ、とわたしは、思わず、心の中でつぶやきました。
フランス語がしゃべれるって、英語がしゃべれるより何倍もかっこいい、とその時、わたしは、確信しました。
自分も、ああなりたい、と単純に、あこがれました。
そうこうするうち、自分の教室の内側から、ノックの音がして、わたしの前に並んでいた人が、先ほどの仏検スタッフにうながされ、教室へと消えて行きました。
スタッフの人が、すぐに扉を閉めましたが、奥から、ボンジュールというフランス人の声が、かすかに響いてきました。
その声を耳にしたとたん、わたしの心臓は、ドキンと大きく脈打ちました。
ちょっと待て、たかが仏検の二次試験ごとき、なんだって、こんなに緊張しているんだ?情けない。仕事で、もっと修羅場をくぐってきたじゃないか、と自分を鼓舞するものの、心臓の鼓動は、早まるばかり。
仕方がないので、いつも緊張したときに行う、1から100までを、頭の中でできるだけ早く数えるというオマジナイをすることにしました。
イチニサンシゴウロクシチハチクウジュウジュウイチジュウニジュウサン・・・・・。
そうやって、何度かくり返していると、だいぶ落ち着きがもどってきました。
これで、前に入った人が出てきて、ふたたび扉が閉められ、内側から準備が整ったよ、というノックがあれば、いよいよ、わたしが教室に入る番です。
わたしは、ごくりと唾を飲み込みましたが、腹が据わったのか、そのころには、心臓の鼓動は、まったく気にならなくなっていました。
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