2006年07月17日

 仏検2級の二次試験体験記(2)



 わたしは、アテネ・フランセの地下2階の廊下で、教室の前に並べられた椅子に座り、呼吸を整えながら、神妙な面持ちで、自分の順番をじっと待っていました。


(1) 扉の向こうへ


 廊下の壁に貼られたポスターをぼんやりと眺めながら、25歳のとき、ストレッチャーに寝かされたまま、交通事故で骨折した左足の手術を待っていたときも、こんな感じだったな、などと、とりとめのないことを考えていました。

 すると、扉がガタゴト音を立てたかと思うと、「Au revoir!」という声に送られながら、先ほどの人が廊下に出てきました。

 いよいよ、わたしの番です。

 しばらく間をおいて、中から、コンコンというノックの音が聞こえました。

 先ほどの仏検スタッフが、わたしに、目で合図を送ります。

 わたしは、立ち上がると、かばんを左手に持ったまま、おそるおそる、扉を横に引きました。

 中は、思いのほか、狭く、正面にいるとばかり思っていた面接官は、右手に、黒板を背にした状態で、こちらを向いて座っていました。

 わたしは、ようしがんばるぞ、と思うまもなく、椅子の置かれた教室の中央まで、歩を進めました。


フランス語の児童書Le Petit Nicolas
Goscinny Sempe
Gallimard




(2) フランス語面接スタート


 椅子の後ろに立つと、フランス人面接官が、なにやら早口でゴニョゴニョと、わたしに声を掛けました。

 しかし、わたしは、ほとんど聞き取ることができず、でも、かろうじて、asseoir (座る)という単語を拾うことができました。

 ああ、座れと言っているんだな、と思い、merci と一礼してから、椅子に座りました。

 左側がフランス人、右側が日本人でした。どちらも男性です。

 わたしは、白髪のおだやかな表情をした日本人面接官に向けて、かるく黙礼をしました。

 すると、左側のフランス人面接官が、なにやらゴニョゴニョとわたしに言葉を投げかけました。

 は、はやい・・・。それが、わたしの第一印象でした。

 背中に冷たいものが走ります。

 しかし、とまどってなどいられません。面接はもう始まっているのです。

 わたしは、すぐに、Pardon? と聞き返しました。

 試験前に付け焼刃で覚えた「Une fois encore,SVP」など、長くて使えやしません。

 すると、フランス人がもう一度、先ほどと同じ調子で、同じ言葉をくり返してくれました。

 今度も、はやい・・・。

 わたしは、2度くり返されても、何を言われているのか、まったく分かりませんでした。

 さすがに、気まずい空気が流れます。

 しかし、負けるわけにはいけません。わたしは、もう一度、申し訳なさそうな表情を浮かべて、それでも、「Pardon?」と聞き返しました。

 3度目に、ややゆっくりとしたスピードで発音されると、わたしは、ああ、そうか、とようやく理解することができました。

 フランス人面接官は、先ほどから「Vous allez bien?」といった挨拶のたぐいを、くり返していたのです。

 たぐい、と言っているのは、この段階でも、まだ完全には聞き取れていなかったからです。

 わたしは、やっと分かったというように、大きくうなづきながら、Oui, bien と答え、とっさに、文章にしなきゃ、と思い、 Je suis très bien. と言い直しました。

 ようやく答えられたものの、英語で言えば、「How are you?」に相当する簡単なフランス語が聞き取れなかったわけですから、わたしのショックは、相当なものでした。

 しかも、答えたあとに、Je suis très bien. で本当によかったのかな、もしかして、「わたしは、とても素晴らしい」なんて言ってしまったんじゃないかな、という不安がチラリと頭をよぎりました。


フランス語の児童書Les Aventures De Tintin Au Pays DES Soviets
Herge
Editions de Minuit,France




(3) 奈落の底へ


 いきなり挨拶からつまづきはしたものの、なんとか意思疎通ができました。

 いよいよ本格的な面接が始まるぞ、とわたしも椅子に座り直し、身構えました。

 すると、フランス人面接官が、手元のメモに目を落としながら、なにやらゴニョゴニョと新しい質問を投げかけました。

 しかし、結果は、またしても同じで、少しも聞き取ることができません。

 わたしは、恥ずかしさで胸を一杯にしながら、再度、「Pardon?」と言うほかありませんでした。

 最初からこんなにつまづくなんて、夢にも思っていませんですし、まさか自分がこんなにフランス語が出来ないなんて。

 フランス人面接官も、2度、3度、くり返しても、少しも理解した表情を見せないわたしに、さすがに困った様子で、ある単語を大きく発音しました。

 ノン、ヴォートルノン。

 わたしは、がくぜんとしました。

 そうなのです。

 わたしは、こともあろうか、「あなたの名前は何ですか?」というフランス語が、聞き取れずにいたのです。


フランス語の絵本Gaspard Et Lisa Au Musee
Anne Gutman Georg Hallensleben
Hachette






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