2006年10月30日

 フランス語で「異邦人」を読む



 アルベール・カミュの代表作「異邦人」をフランス語で読みました。


(1) 「異邦人」をフランス語で読む


 今から3年前の、2003年10月29日、わたしは、相棒とふたり、近所のJTBに出向き、パリ旅行の申し込みを済ませたのでした。

 きれいな秋晴れの午後で、相棒は、ガイドブックや旅行パンフレットを広げながら、本当に、エッフェル塔や凱旋門が、この目で見られるんだね、と夢見心地でした。

 わたしが、まだ最初の教材「Talk Now!」の存在も知らず、フランス語のフの字も知らないころでした。

 そんな自分が、3年後の今秋、とうとう、「異邦人」を、フランス語のまま最後まで読めたというのですから、自分でも、驚いてしまいます。

 もちろん、読めた、といっても、おおよその文意が取れた、といった程度のことです。

 でも、わたしは、研究者になるわけでも、翻訳家を目指しているわけでもなく、たんに趣味でフランス語を楽しんでいるだけですから、それで、十分満足です。

 「異邦人」の最後の章は、2週間ほどまえ、秋空の下、近所の公園のベンチで読んだのですが、若いころ、いちばん好きだったフレーズ「la tendre indifférence du monde」が出てきたときは、胸がうち震えるのを感じました。

 そして、記憶どおりだった最後の1文を読み切り、ページから目を離すと、目の前に広がる人工池のにび色の水面が、白い雲を映してキラキラと輝いていました。


 L'Etranger (Collection Folio, 2)


(2) 「異邦人」のフランス語の難易度



 いつだったか、仏文科出身の同僚から、「L'Etranger」は、たいへん読み易いフランス語で書かれているので、フランス語学習者の格好の入門書である、というような話を聞いたことがありました。

 当時は、心の中で、「L'etranger」が易しい?入門書?? やっぱり専門でやっている人たちは世界が違うなあ、としょんぼりした記憶があります。

 でも、たしかに、素人のわたしが読んでみても、分かりやすいと感じるくらいですから、「L'etranger」は、かなり読みやすい部類に入るのだと想像されます。

 とくに私の場合、若いころに、邦訳をくり返し読んでいましたから、いっそう読みやすく感じたのではないかと思います。

 それが証拠に、くり返し読んだ第1部は、辞書はもちろん、理解の助けのために同時購入した英訳「The Stranger」を開くことは、結局、ほとんどありませんでした。

 他方で、第1部ほどは読み込んでいなかった第2部に入ると、章によっては、1パラグラフごとに、英訳を読まないと理解できないという箇所も多々出てきました。

 ですから、もし、わたしが邦訳で1度も「異邦人」を読んだことがなければ、きっと、これほどスムーズに読み進めることは、できなかったと思います。

 それを考慮に入れた上で、「L'etranger」のフランス語の難易度を、フランス語検定試験と関連付けて、主観的に説明すると、次のようになるかと思います。

 わたしは、仏検2級の長文は非常に易しいと感じるけれど、仏検準1級の長文はまだちょっと難しい、という時期に、「L'etranger」に挑戦して、最後まで読むことが出来ました。

 もし、仏検2級の長文がギリギリ読めるくらいの時期に挑戦していたら、きっと挫折していたろうと思います。

 逆に、まだ仏検準1級の長文を難しいと感じる時期でも、邦訳で内容を知っていれば、十分に挑戦できる難易度だと思います。


  
The StrangerThe Stranger
Albert Camus Matthew Ward
Vintage Books




(3) 「フランス語の多読」英訳の活用


 わたしは、当初、自分がこれほど、すんなり読めるとは思ってもいませんでしたから、「L'Etranger」を買うときに、英訳版である「The Stranger」も、同時に注文しました。

 構文や意味がつかめないところは、邦訳よりも英訳の方が分かりやすいだろうと考えたからです。

 しかし、実際には、思ったより、英訳は用いませんでした。

 第1部では、ほとんど開きませんでしたし、第2部も部分的な参照にとどまり、通読することはありませんでした。

 というのも、ひとつには、上にも書いたように、第1部はフランス語だけで大丈夫だったということがあるのですが、実は、英訳を読むと、興ざめしてしまう、というのが、最大の原因でした。

 せっかくフランス語の世界にどっぷりつかっているのに、英訳で「Maman died today. Or yesterday maybe, I don't know.」とやられても、説明的で、ぜんぜん原書の雰囲気と違ってしまうのです。

 こんなにも違うものか、と自分でもびっくりするほど、英語で読むのと、フランス語で読むのとでは、まったく受ける印象は異なりました。

 とくに、音、響きは、決定的でした。

 ですから、多少分からないところがあっても、なるべくなら英訳は開きたくない、という気持ちがあったのです。


 フランスのいまを知るために


 そうは言っても、第2部に入り、内容をあまり覚えていない箇所になると、一気に、理解がとどこおり、1文だけでなく、パラグラフ全体の意味がつかめない、というケースもたびたび出てきました。

 そうなると、雰囲気もへったくれもありません。

 細部はともかく、文脈が追えなくなってしまっては、仕方ありません。

 まず、フランス語で1パラグラフを読み、だいたいの意味をつかんだら、該当箇所だけを英訳で確認し、もう一回フランス語で読んでみる、という形で進めました。

 だんだん面倒になって、最後にもう一回フランス語で読む、という手順は省略されることが多くなりましたが・・・。

 このいわゆる「対訳本」形式の読解も、見開きで、左にフランス語、右に英訳、という形式になっている、まったくの対訳本ではありません。

 ですから、調べたいと思っても、すぐに対応する箇所がポンと出てくるわけではないので、その点では、多少、不便でした。

 しかし、辞書でいちいち言葉の意味や用法を調べなくても、構文が視覚的に理解できるうえに、全体の文脈の確認にも便利でした。

 とくに、わたしは、英語であれ、フランス語であれ、多読と精読を区別し、多読の場合は、辞書を用いない、というのを原則にしているので、今回も、もし英訳本を同時に買っていなかったら、確実に、第1部で挫折していたと思います。

 辞書を引き引き洋書を読む、というのは、どうも勉強臭が強すぎて、本来の読書の楽しみを損ねるようで、わたしの性に合わないのです。

 「フランス語名詞化辞典」の学習をする際には、これでもか、というくらい辞書を引き倒していますから、読書のときはかんべんして、という気分なのです。

 残念ながら、あこがれのフランス語のペーパーバックの世界を、自由に走り回るには、いましばらく、英訳本という補助輪が、わたしには必要なようです。


 L'Etranger (Collection Folio, 2)  The Stranger


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