2007年01月14日

 フランス語学習の悲しき副産物



 フランス語や英語ばかり読んでいると、わたしは、無性に日本語が恋しくなることがあります。

 などと書くと、まるでわたしが、ふだんから洋書を山のように読んでいるかのような気障な物言いに響くかも知れませんが、そうではありません。

 真相は、まるで逆です。むしろ洋書が思うように読めないストレスが、わたしを日本語へと向かわせるのです。


 やさしいフランス語の読みもの


 たとえば、英語は、去年の秋に購入した「The Inheritance of Loss」と「My Name Is Red」が、たったいま本棚に手を伸ばして確認したところによると、前者は64ページ、後者は4章の最後にしおりが挟まったまま、しばらく手付かずの状態でしまわれています。

 フランス語の方も、「L'Etranger」が読めたことに気をよくしてから購入した「Parallel Text」と「Le Mystère de la chambre jaune」が、同じように、長いこと放置されたままでいます。

 また、いまいちばん力を入れたいと考えている、フランス語ニュース記事の読み込みも、まだまだ語彙力不足で、思うように進んでいません。

 とくに、フランス語の場合、語彙力が決定的に不足しているので、わずか1行読むあいだにも、知らない単語に、小気味良いほどゴツゴツぶつかり、大きなストレスとなっています。

 その多くは、英単語との類似性から、何となく意味が類推できるとはいえ、それにしても、やはり限界というものがあります。


 やさしいフランス語の読みもの


 にもかかわらず、わたしには、自分が多読教材と位置づけたものに関しては、辞書引きを極端におっくうがる、良いのか悪いのか判然としない学習姿勢が骨身にまで染みついています。

 学生のころから、ボキャビルの機会と多読の機会を分けて考える習慣があるのです。

 そして、どうも、英語学習で有効だった、多読のときは辞書を用いないという原則を、基礎体力がぜんぜん違うフランス語にも、無意識に適用してしまっているようなのです。

 結果として、まるで暗やみの中を手探りで進むかのように、はたして自分が正しい方向へ進んでいるのか、それすらはっきりしない薄ぼんやりとした理解のまま、わずかなヒントを頼りに、想像力で補いながら全体像を構築していく、というような読書が多くなってしまいます。

 それでも、まったく理解できていなければ、そもそも読み進めようという気すら起きないはずなので、読み進めているからには、そこそこ理解できているのではないかと捉えています。

 最後まで読み通すモティベーションが保てるかどうかが、その文章がある程度、理解できているかどうかのメルクマールになると、わたしは考えているのです。


 フランス語と英語の対訳本


 しかし、この「そこそこ」というのが曲者で、こうして読んでいてもいまひとつピンと来ないけれど、もう少し先まで読めば分かるようになるかも知れない、もうちょっと読んでみよう、とズルズルいって、結局、読み終えてみても、うーむ、読むには読んだけれど、本当に理解できているのだろうか、と首をひねることが、しばしばなのです。

 いずれにせよ、文章を読んでいて、知らない単語に次から次へとぶつかるのは、相当の苦痛ですし、そのうえ、自分が理解できているのか、いないのか、どうもはっきりしない状態が続くというのも、徒労感が募ります。

 そして、この歯がゆさが、ある限度まで昂ずると、あたかも禁断症状のごとく、わたしの身体が日本語を欲し始めるのです。

 冒頭の、フランス語や英語ばかり読んでいると、無性に日本語が恋しくなる、というのは、そういう意味なのです。


 やさしいフランス語の読みもの


 そのようなわけで、わたしは、この正月に相棒がプレゼントしてくれた、柴田元幸さんの翻訳によるポール・オースターの「ミスター・ヴァーティゴ 」を、この10日間、むさぼるように読んだのでした。

 最初の1ページを読み終わり、知らない日本語がひとつも出てこなかったという思いがチラリと頭をよぎったとき、それだけで、胸の空くような爽快感を覚えました。

 なにせ、目にする文章が、ことごとく自分の中に吸い込まれていくのです。言葉が分かるって、なんて気持ちいいのでしょう。

 しかも、10日間かけて400ページある「ミスター・ヴァーティゴ 」を丸々一冊読んでも、意味が分からず電子辞書で調べたのは、フラッパーという外来語わずか1語のみ。英語やフランス語では、とてもこうはいきいません。

 ここ数ヶ月のあいだに手にした英仏の洋書にほとほと手を焼いていたところに、ストーリーテラーとして名高いポールオースターの作品で、しかも、わたしの好きな柴田元幸さんの翻訳であるという事情もあいまって、久しぶりに本を読む楽しさに酔いしれることができました。

 外国語学習の停滞ぶりが、逆に母語の魅力を際立たせてくれたのです。

 たびたびくり返されるこのような現象を、わたしはふだん、悲しき副産物と名付けて、フランス語の進歩のなさを揶揄しているというわけなのです。



 やさしいフランス語の単語



■ フランス語のペーパーバックの世界へ

■ 同時に複数の参考書を利用する





彼女はときどきフランス語と遊ぶ new










フランス語検定体験記 フランス語の学習日記
  フランス語の独学スタート   フランス語の学習法
  仏検3級・4級体験記   フランス語の例文暗記
  仏検2級体験記   フランス語の単語暗記
  仏検準1級体験記   フランス語の多読日記
  仏検1級体験記   フランス語の聞き取り・書き取り
  フランス語のよもやま話   フランス語の参考書レビュー
  フランス語の学習記録   全記事一覧
  Elle joue avec les Français de temps en temps.   キンドル(Kindle)とフランス語
  プロフィール   フランス語の参考書フランス語の参考書・問題集



30からのフランス語
彼女はときどきフランス語と遊ぶ

Feel free to link this site.

ブログパーツ