読書の秋ではないですが、毎年、この時期になると、わたしは、ノーベル文学賞とブッカー賞の発表を、とても楽しみにしています。
わたしが洋書をよく読むようになったのは、30代に入ってからで、ノーベル文学賞やブッカー賞に興味を持ち始めたのも、そのころからでした。
世界文学、とくに現代の作家に疎いわたしにとって、この2つの賞は、自分の洋書の世界を広げてくれる、いい機会なのです。
毎年、秋になると、受賞の発表を受けて、自分にも読めそうな、あるいは、興味が持てたものに関しては、原書にチャレンジしているのです。

2004年ノーベル文学賞(エルフリーデ・イェリネク )
ところで、わたしにとって、ノーベル文学賞といえば、やはり、まだ20代前半だったころの、大江健三郎氏の受賞が衝撃的でした。
なにしろ、ちょうどそのころ、友人の影響で、「個人的な体験」を皮切りに、大江健三郎の著作を読み漁っていた時期でしたので、新聞で一報を知ったときは、本当にびっくりしました。
自分がいままさに夢中になっている作家が、まさかそんなにすごい作家だったとは、夢にも思っていなかったからです。
その後も、自分のいた大学に、受賞直後の大江健三郎が講演に来ることを知り、学生時代の友人といっしょに大学の講堂に聴きに行ったのが、懐かしく思い出されます。
講演後、エントランスで友人と話をしていたら、目の前を当の大江健三郎その人が通り過ぎ、気づいた何人かと、大江健三郎が関係者とエレベーターに乗り込むところまで、後をついていったのが、いい思い出です。

1994年ノーベル文学賞(大江健三郎)
それはそれとして、「洋書の世界を広げる」という観点から、ノーベル文学賞に興味を持ち始めたのは、2003年のJ・M・クッツェーからです。
こちらも、わたしには鮮明な記憶として残っています。
というのは、J・M・クッツェーの「Disgrace
10代20代ならいざ知らず、30歳を過ぎてから文学を読んで、これほどまでに心が揺さぶられたのは、初めてのことでした。
しかも、翻訳ではなく原書で。
そのころのわたしは、もう自分は感性が鈍くなってしまい、かつてのように文学では感動できなくなっている、と嘆いていましたから、これは大きな驚きでした。
いずれにせよ、30歳から本格的に取り組んだボキャビルのおかげで、それまで読めなった洋書が少しずつ読めるようになっていたわたしにとって、ノーベル文学賞作家の作品が原書で読めた、という事実は、大きな自信を与えてくれたのです。

1999年ブッカー賞受賞作品(J・M・クッツェー)
以来、V・S・ナイポールやら、エルフリーデ・イェリネクやら、去年のオルハン・パムクなど、ノーベル文学賞の発表があるたびに、わたしの現代作家に対する知識は少しずつ増えていったのです。
ただ、ノーベル文学賞の場合、その性質上、英語圏の作家が受賞するとは限らず、その場合、読むとしても、原書ではなく、英訳になってしまうというのが、難といえば難でした。
なお、今年のノーベル文学賞は、ドリス・レッシングというイギリスの女性作家ですので、原書へのチャレンジが可能です。

2007年ノーベル文学賞(ドリス・レッシング)
ところで、わたしが、ブッカー賞の存在を知ったのも、ちょうどそのころでした。
というのも、2003年のノーベ文学賞受賞者J・M・クッツェーは、過去2度にわたるブッカー賞受賞者でもあったからです。
ブッカー賞は、ノーベル文学賞とは異なり、イギリスの文学賞なので、すべて英語で書かれた作品が対象となっており、洋書の世界を広げるという観点からは、こちらの方が便利です。
現に、わたしの場合、J・M・クッツェーを筆頭に、カズオ・イシグロの諸作品や、「The Line of Beauty」、「The Inheritance of Loss」など、ブッカー賞を通じて出会った作品の方が多くなっています。

1989年ブッカー賞受賞作品(カズオ・イシグロ)
わたしは、ブッカー賞の公式ホームページでメール購読の登録をしてあるので、毎年この時期になると、ロングリストから始まって、ショートリスト、最終結果、と順を追って、メールが届きます。
今年も、すっかり忘れていましたが、そのメールのおかげで、ああ、またこの季節になったのか、と思い出させてもらいました。
そして、忘れないうちに、その足でアマゾンに向かい、とりあえず、2007年の受賞作であるAnne Enrightの「The Gathering
現段階では、注文するかどうかは、まだ未定ですが。
なにせ、実力もないのに、ぽんぽん買い集めてしまうので、わたしの書棚には、読みさしの洋書が、ごろごろ転がっているのです。
しかし、たとえ、書棚に読みきれない洋書の山が増殖しようとも、ノーベル文学賞とブッカー賞は、確実に、わたしの洋書の世界を大きく広げてくれました。

2007年ブッカー賞受賞作品(アン・エンライト)
ところで、現在、英語ではなく、フランス語の習得に力を注いでいるわたしとしては、むしろ夢は、フランスの文学賞である、ゴンクール賞の作品を楽しめるようになることです。
歳をとってから、窓辺で、ロッキングチェアに揺られながら、老眼鏡をかけて、その年のゴンクール賞受賞作品を、毎年楽しめるとしたら、なんて素敵な老後なのでしょう。
さて、毎年11月に行われるゴンクール賞の発表も、いよいよ近づいてきました。
「フランス語名詞化辞典」を数回まわしたおかげで、だいぶ語彙力がついてきた今なら、もしかしたら、挑戦できるかも知れないと、不遜にも、淡い期待を寄せています。
しかし、フランス語学習者である今のわたしが、もっと目を向けなくてはいけないのは、どうせ読めもしないゴンクール賞の発表などではなく、1ヵ月後に差し迫ったフランス語検定試験なのです!

現在、わたしが夢中になっているJ・M・クッツェーの作品
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