2005年10月05日

「星の王子さま」を英語とフランス語で読む?



 英語版の「星の王子さま」を読み終えました。

 「The Little Prince」は、数ページごとに挿絵が入るうえに、全体でも100ページあるかないかで、寝る前や半身浴をする、ちょっとした合間を利用するだけでも、数日あれば読み終えることのできる、手ごろな分量でした。

 ときおり、tippler や ermine など、それまで目にしたことのない単語にぶつかることもありましたが、全体の語彙レベルは、せいぜいセンター試験くらいで、1つ1つの文章は短く、構文も非常にシンプルでした。

 なにより、各章がほんの数ページずつしかないというのが、読みやすさに拍車をかけています。ぜんぶで27章ほどあるのですが、このように細分化されていると、いつでもキリのいいところでやめられるので、寝る前のほんの5分、10分でも、読もうという気にさせられました。

 かつて読んだロアルド・ダールの「Charlie and the Chocolate Factory」や「Matilda」といった定番の児童書と比べても、読みやすい部類に入ると思います。

 「What is essential is invisible to the eye」という有名な一節が出てきたときは、ちょっぴりうれしかったです。


   The Little Prince    Charlie and the Chocolate Factory (Puffin Novels)    Matilda (Puffin Novels)


 読み始めのうちこそ、子供は純粋で大人は不純という、あまりにステレオタイプな図式に、あやうく途中で本を閉じかけそうになりましたが、後半になるにつれ、とくに蛇やきつねが登場するあたりから、急速におもしろくなり始め、あとは、結末までぐいぐいと引き込まれてゆきました。

 浴槽のなかで読み終わり、最初にわたしが発した一言は、なるほどねえ、でした。

 なぜ「星の王子さま」が単なる児童書の域を超えて、これほどまでに世界中の人々に読みつがれているのか、納得できるような気がしたのです。

 おそらくこれだけ人気があるのは、読んでいる最中に、蛇やバラは何を象徴するのだろう、きつねの語るメッセージとは何だろう、と読み解くおもしろさがあるからなのではないでしょうか。

 これは「Charlie and the Chocolate Factory」や「Matilda」では味わえない感覚です。児童書というより、むしろ、大人が読むものなのかも知れません。「大人のための残酷童話」の倉橋由美子さんが翻訳されているのも、うなずけます。

 もういちど読み直したい、とまでは思えませんでしたが、深みのある本ではあることは、たしかです。


   Le Petit Prince    新訳 星の王子さま    大人のための残酷童話   


 さて、肝心な話は、ここからです。

 当初の目論みどおり、英語版の「The Little Prince」を読み終えてすぐ、原書の「Le Petit Prince」の方を開いてみました。

 効果は抜群です。

 もちろん、依然として、知らないフランス語の単語は山ほどあります。しかし、どのページのどの箇所を開いても、その文が何を言っているのかが分かります。

 といっても、フランス語力で分かるというより、読み終えたばかりだから分かるといった方が実情に近いでしょう。

 つまり、いまだ新鮮な記憶と、もとからの英語とフランス語の構文上の近似性が、未知の単語の類推を助けてくれている、ということになると思います。

 読み終えてすぐに試したのだから、当然といえば、当然の結果といえます。しかし、英訳を読む直前まで抱いていた、原書に対する、ある種の近寄りがたさは、吹き飛んだ感があります。

 あらかじめ英訳を読んでおくのとおかないとでは、原書の読みやすさに、天と地ほどの差がでると、肌で感じることができました。


   Master of the Game    The Sky Is Falling    The Umbrella Man: And Other Stories


 ところで、こうして、 Dual-Language Book 方式のある程度の効果は確認できましたが、他方で、限界にも気づかされる結果となりました。

 それは、いちど読んだ「星の王子さま」を、たとえそれが今度はフランス語の原書であるにせよ、もういちど頭から読み直す気には、とてもなれない、ということです。

 つまり、Dual-Language Book 方式には、再読に耐えうるだけの、よほど気に入った本を選ばないと、勉強色が強くなり過ぎて続かないという、心理的な負の側面が存在するのです。

 かつて、英語力をつけようと、ロアルド・ダールやらシドニーシェルダンやら、日本語でならまず読むことのないであろうタイプの本を、ただ読みやすいという理由だけで、多読の素材にしていたころ、始めのうちこそ、英語で読める喜びが牽引してくれるのですが、あっという間に知的好奇心が枯れて、読む気が薄れてしまう、という経験をしましたが、今回も根っこは同じようです。

 結局、Dual-Language Book 方式は、勉強としての効果は期待できるけれど、読書本来の喜びは期待できないということになりそうです。

 ただ、もしかしたら、フランス語の原書を先に読んで、あとから英訳で確認するという使い方をするか、あるいは、分からないところだけ英訳を参照するという使い方をすれば、この点は解消できるのかも知れません。

 わたしが今回やったような、別々の本を使った、お手製 Dual-Language Book だと、そのような使い方は、とても面倒くさくて、する気になれませんが、「French Stories/Contes Francais」や「Selected Fables = Fables Choisies」のような本物の Dual-Language Book なら、見開きで左がフランス語、右が英語という形式になっているので、そういった使い方も容易にできることでしょう。


   L'Etranger (Collection Folio, 2)    French Stories/Contes Francais: A Dual-Language Book (Dual-Language Books)    Selected Fables = Fables Choisies: A Dual-Language Book (Dual-Language Book)  


 いずれにせよ、今回の実験で、いまのところ一番の目標である「L'Etranger」を読むときは、英訳を先に読むことは絶対にせず、初めからフランス語で挑戦しようと思いました。多少は苦労しても、原書を読む喜びをそのまま生で味わいたいですからね。

 
L'essentiel est invisible pour les yeux.


(参考記事)

 「星の王子さま」を英語とフランス語で読む?
 外国語を学ぶ喜び 















この記事へのコメント



◎ langcoach*** さんのコメント
2005年10月07日



フランス留学中にCD付の星の王子さまを購入するも、なんと途中でくじけてしまい、ずっと結末は知らないままでした。帰国後ボイストレーニングを受けている時に、たまたま先生が星の王子さまの日本語版を音読してみて!ということになり、(なんでも星の王子さまは音楽療法などにも使われているそうです)すっかりストーリに引き込まれ、数週かけてラストまで完読しました。その後、先生から英語版をプレゼントされて、少し読み始めたのですが、進まず。
ちなみにL'Etrangerはフランスで文学の授業の課題図書でした。こちらも授業では一部しかやらなかったので、ぜひ読破したいものです。






◎ moitie さんのコメント
2005年10月07日



langcoach さん、はじめまして!コメントありがとうございました。いま langcoach さんのブログから帰ってきたところです。ハンドルネームの意味が、たったいま分かりました。語学コーチとは初めて耳にする言葉で、たいへん興味をもってブログを拝見しました。短期間で一気に駆け上がらなければいけない、というのは、自身も感じていたことなので、非常にためになりました。それにしても、わたしも語学好きを自認していましたが、6ヶ国語同時挑戦とは、恐れ入りました。また勉強しにうかがいたいと思います。







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