2008年03月07日

 なぜフランス語の聞き取りが出来ないのか(2)



 なぜ、わたしは、個々の音声は聞き分けられるのに、ひとかたまりになったフランス語の文章は、聞き取ることが出来ないのでしょうか。

 それは、まだわたしの頭の中に、フランス語の回路が十分に備わっていないからだと、わたしは思います。

 フランス語の回路とは、目や耳から入ってきたフランス語が、解釈工程を経ることなく、瞬時に脳の中枢まで到達することができる、フランス語の通り道をいいます。

 たとえば、まだフランス語の勉強を始めたばかりのわたしが、初めて Il m'a dit que...というフランス語を目にしたとします。

 すると、初めてわたしの頭の中に進入した Il m'a dit que は、内部で、次のような解釈工程を経ます。

 Il は形式主語ではなく主語人称代名詞である。

 m'a は me+a がエリズィヨンされたものである。

 me は dit の間接目的補語である。

 a は avoir の直説法現在3人称単数である。

 dit は dire の過去分詞である。

 a dit は複合過去である。

 que 以下は dire の直接目的補語である。

  Il m'a dit que は、このような解釈工程を経て、ようやく「彼は que 以下の内容を私に言った」という意味をたずさえて、わたしの脳の中枢に到達します。

 そこで、ようやく、わたしは、Il m'a dit que の意味を了解するのです。



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 子供のためのフランス語バイリンガル教材



 しかし、もちろん、わたしとて、いつまでも Il m'a dit que を見るたびに、毎回、このような解釈を行うわけではありません。

 何度か Il m'a dit que を目にするうちに、いつの間にか、そのような解釈をすることなく、一瞬で意味が了解できるようになります。

 では、なぜ、そのようなことが可能になるのでしょうか。

 それは、Il m'a dit que の回路が、わたしの頭の中に形成されたからだ、と言えることが出来ると思います。 

  Il m'a dit que が解釈工程を経て、脳の中枢へと運ばれていくとき、その通り道には、モグラの穴のような痕跡、すなわち、Il m'a dit que 専用の回路が開通します。

 こうして、いったん穴(=回路)が開通すると、次に Il m'a dit que がやってきた際には、もう穴を掘る作業(=解釈工程)がいらなくなるのです。

 つまり、後続の Il m'a dit que は、すでに開通している専用の回路を通って、瞬時に脳の中枢まで到達することができるのです。



 Learn French in Your Car
 車の中で学ぶフランス語



 フランス語の回路は、類似のフランス語が何度もそこを通ることで、徐々に整備されていく、いわばフランス語の「けものみち」です。

 別の視点からいえば、解釈とは、初めて通るフランス語のために、脳の中枢まで穴を貫通させてやる作業なのです。

 わたしが現在 Il m'a dit que を一瞬ですんなり理解できるのは、かつて1度は、頭の中で、このような解釈作業を行い、Il m'a dit que の通り道、すなわち、回路を開通させた経験があるからなのです。

 みなさんも、フランス語の数字を学びたてのころ、耳で「キャトルヴァンカンズ」という音声はちゃんと聞き取れているのに、それがとっさに「95」と変換できなかった経験はありませんか?

 それは、「キャトルヴァンカンズ」という音声が解釈工程に回されてしまうことから発生する現象です。

 音声が聞き取れていないからではありません。

 ちゃんと「キャトルヴァンカンズ」の回路が形成されれば、瞬時に「95」という意味が脳に伝わるので、このように、聞き取れているのにとっさに意味が浮かばないという現象は起こらなくなります。



 フランス語を始めましょう
 フランス語を始めましょう



 さて、ようやく、冒頭の問いに答える準備が整いました。

 なぜ、わたしは、個々の音声は聞き分けられるのに、ひとかたまりになったフランス語の文章は、聞き取ることが出来ないのでしょうか。

 くり返しになりますが、それは、わたしの頭の中に、フランス語の回路が十分に整備されていないからです。

 もし、仮にわたしの頭の中に、フランス語の回路が十分に整備されていたとすれば、わたしの耳から入ったフランス語は、解釈工程を経ずに、瞬時に脳に到達するので、入力と理解のあいだに、時間差が生じません。

 そのため、次々に押し寄せては消えていくフランス語であっても、リアルタイムで意味を把握していくことができるのです。



 Teach Me French: A Musical Journey Through the Day (Teach Me Series)
 歌で学ぶフランス語



 ところが、現状では、回路が不十分であるため、耳から進入したフランス語のほとんどは、解釈工程に振り分けられことになります。

 すると、解釈工程の現場は、次々に押し寄せては消えていくフランス語であふれかえり、やがて機能不全におちいります。

 もし、これが、フランス語を文字で読むのであれば、入力をいったん停止することで、解釈工程の現場の混乱を収拾することも可能です。

 しかし、耳で聞く場合は、それが出来ません。

 そのため、耳から入ってきたフランス語のうち、あるものは回路を通じて瞬時に脳に到達し、あるものは解釈工程を経て時間差で脳に到達することもできるでしょう。

 しかし、大部分の音声は、前が詰まっているがために、解釈工程にすら進むことが許されず、ただただ消え去る運命なのです。

 これが、「聞き分け」はできるのに、「聞き取り」が出来ない理由だと思います。

なぜフランス語の聞き取りが出来ないのか(1)
フランス語「速読」と「聞き取り」の関係











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