33歳でフランス語の独学を始めてからというもの、街で、ちょっとしたフランス語を見かけると、わたしは、それだけで、なんだか、とても幸せな気分になってしまいます。
あれはたしか、まだ「新リュミエール」でフランス語の文法を始める前のことでした。
そのころ、わたしは、3ヵ月後に控えたパリ旅行に備えて、「やさしいフランス語の発音」という発音に特化した教材で、フランス語の発音をイチから勉強していました。
発音とつづり字の関係がだいたい分かるようになってからは、今度は、「ラピッド単語暗記帳」という、単語を耳で聞いて覚える一風変わったCD教材を使って、旅行先で使えそうな単語だけをピックアップして、リオに入れてせっせと覚えていたのでした。
相棒と、花の都パリの街角を闊歩する自分の姿を想像しながら・・・。

そんなある日のこと。
近所のスーパーだか、図書館だかからの帰り道だったと思います。
いつもの交差点で、信号を待ちながら、ふと、すぐ脇にある喫茶店の看板を目にした瞬間でした。
あれ、これって、もしかして、フランス語ではなかろうか、と急にひらめいたのです。

そこには、大きくカタカナで、シャノアールと書かれていました。
あれ、ノワールって、たしか、フランス語で、黒っていう意味じゃなかったっけ。
ということは、シャとノアールの2つの単語で出来ているということだな。
シャ・・・
どこかで聞いたことのある響きだな。
あ、ルシャオーズュードール。
金色の眼の猫でよく耳にする単語だ。
うーん、ということは、シャは、猫か。
chat noir・・・
あッ、黒猫か!!
![フランス語聴くだけのラピッド暗記単語帳 基礎編[CD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51T4RADPVYL._SL160_.jpg)
それまで何度となく目にしていた看板でしたが、まさかフランス語だったとは。
なにせ、avoir の活用も知らず、形容詞が名詞の後ろから修飾することすら新鮮に感じていた、フランス語学びたてほやほやの時代の話です。
このときの感動といったら、ありませんでした。
わたしは、家に帰ると、すぐに相棒に、あそこのさ、シャノアールって喫茶店あるじゃない、あれね、フランス語で黒猫という意味なんだよ、さっき気がついたんだ、と息も切れ切れに報告したのでした。
おそらく、この「シャノアール事件」こそ、わたしが、参考書の中ではなく、日常生活の中で出会った、最初のフランス語だったのではないでしょうか。
なつかしい思い出です。
日常生活で出会うフランス語(ヴィドフランス編)
図書館で出会ったフランス語(外国語を学ぶ喜び)
彼女はときどきフランス語と遊ぶ new